SSTR2019 参戦レポート ツーリズム部門


ツーリズム部門 大賞

NO.1855
氏名:大江 利子 さん

「くそーっ」と振り絞るような声をあげて右腕を遠く伸ばしながら夫は意識を失った。夫が腕を伸ばした先には完成したばかりのオートバイ車庫があった。4年前突然倒れた夫は10日間意識不明のまま55歳の生涯を閉じた。最愛の夫が私に遺したものは絶望と悲しみとオートバイだった。悲しみのどん底で何か月も泣き暮らした私は決心した。夫がやりたかった事は私が全部やる。だからオートバイにも乗る。音楽を生業とし42年間ピアノを弾き続けてきたこの手で二輪のハンドルを握る日が来るとは想像もしていなかったが夫の愛車を他人に任せる気にはなれなかった。52歳で初めて二輪免許取得し前途多難だったが幸いにも自宅近所にジムカーナ練習場があった。8の字を一万回練習してタイヤをツルツルにした頃、ツーリングに行く勇気がわいてきた。オートバイに乗っていると夫の声が聞こえる。魂だけになった夫の声に導かれてオートバイと日本各地を走り、美しい風景や素晴らしい人々に出会った。今回も「SSTRに参加しよう」と夫の声。無事にゴールし千里浜海岸でシャクナゲ色の夕陽を見送り感無量だった。が、まだ何かある気がする、何だろう?ラリーの帰路にその答えが咲いていた。宿泊した岐阜県白川村の宿の裏庭に水芭蕉の花が咲いていた。昔学校で音楽を教えていた頃、初夏には「夏の思い出」を生徒と良く歌った。この歌は水芭蕉の花が咲いている夢のような世界に浸れる名曲だ。いつか私も実際に「夏の思い出」の風景を見たいと憧れた。しかし日常に追われ年齢を重ね水芭蕉への想いも心の奥深く沈み自分でも忘れていた。しかしSSTRに参加したおかげで水芭蕉の花に出会い、昔の想いを取り戻せた。オートバイで風を感じながら走っていると瑞々しい感性が甦る。私が水芭蕉の花に気がついたのもSSTRでたくさん走って感性のアンテナの感度が上がっていたからに違いない。夫とオートバイとSSTRよ、ありがとう。


ツーリズム部門 佳作

NO.8
氏名:竹内 重二 さん

SSTR、今年で3回目の出場。どんな事でも同じ事を繰り返せばマンネリ化する事は避けられない。一番最初走った時に大きな感動を覚えたあのなぎさドライブウェイでさえ、何往復もした結果もう大した感動は覚えなくなっている。
では何でわざわざ休みを取って、時間とお金を掛けてまで千里浜に向かうのか?バイクを走らせるのは別に千里浜でなくても良いのに、千里浜そしてSSTRを選んでしまうのは、様々なコミュニケーションが生まれ易い環境が有るからだと私は思う。
他の参加者との休憩中の会話だったり走行中のハンドサインだったり。今回も本当に色んな方々とのコミュニケーションが取れた2019SSTRだった(中には咥え煙草で話しかけて来た不届者も居たが・・・)。その中で最大限の効果を発揮したのが今回のゼッケン。参加者ライダーは勿論、狼煙を廻った後のガソリンスタンドの方にまで「凄い番号ですね!」と話しかけられ、大いに会話が弾んだ様に思う。 
結局のところSSTRというのは、色が付いていない無色の与えられた素材。それをどう着色して楽しいイベントへと成長させていくかは参加者本人次第だと思う。そしてその着色の方法にセオリーはなく、各々が自分なりの方法で決めていく。冒頭マンネリと書いたが、そう感じてしまったのも自分の責任。当然だがまだまだ改善の余地が有る事の証明でもある。だから多くの参加者は来年も又千里浜を目指すのだろう。勿論私も。


ツーリズム部門 佳作

NO.985
氏名:木村 真由美 さん

内緒にしておきたいけど、自慢したい古民家宿。
SSTR事務局の方が紹介してくれた、限定20名の古民家に泊まろう企画。
正直、値段から言って期待はしてなかったんです。完全に裏切られました。
お布団あって、軽く味噌汁とおにぎりの夕飯が出ればいいやって思って申し込んだ訳ですが、行ってみてビックリ!
皆んなが迷うだろうと登りを立ててくれて、「歓迎SSTR」の手作り看板。バラバラに到着するライダーを何時間も家の前で待っててくれたお父さん達。お母さん達の真心こもった手作りの料理でおもてなし。
後で聞きましたが、よもぎ餅は何回も試作を重ねた傑作品、手作りの山菜料理は、お母さんが毎年急斜面を降りて収穫しているものだと聞いて、場所を見て驚きそして感動!
私達女性3人の為に、わざわざ別のお母さんの家を提供してくれて、夜中まで女子トークに花が咲きました。
夜ご飯だけと聞いていたのに、朝早く出発するのライダーのために、豪華モーニングバイキングまで準備してくれていて、さらに「旅の途中で小腹が空いたら食べなさい」沢山のお土産まで持たせいただきました。
「また、いつでも遊びにおいで」と見送ってくれ思わず「行ってきます〜」と手を振りました。次は「ただいま〜」ってお邪魔したいと思います。
SSTR初参加でしたが、日本のおもてなしの心に触れる良い旅となりました。


ツーリズム部門 佳作

NO.2099
氏名:産屋敷 誠 さん

「ツーリズム部門」月曜朝の和倉温泉。通りにはSSTRの街灯フラッグがたなびき、夢の跡のようである。同宿の3台の参加者はすでに発ったようだ。週明けのけだるさ漂う通勤車に交じり七尾駅へ。七尾駅から穴水駅まで、「のと里山里海号」と冠した特別列車をのと鉄道が運行している。平日は運賃+300円で乗車でき、アテンダントによる車窓案内が付く。木がふんだんに使われた車内には、能登の工芸品が展示され、座席に木製テーブルが付き、食事は出ないが途中駅で何か買えばよい。乗客は親子連れと私の2組。和倉温泉を過ぎる頃にはガタンゴトンと、水が張られ青苗の揺れる水田をゆっくり進み、そうかと思えば、入江の漁村を見下ろす高台に停車し撮影タイム。沿線に花を持って手を振るおばあさん。もう一人見える。列車の時間に合わせいつも手を振ってくれているそうである。バイクと違い視野に余裕があり、ゆっくり景色が流れる。能登中島駅は昭和の佇まいで、国鉄時代の鉄道郵便車「オユ10」が展示されている。子供の頃、列車に〒マークが描かれた車両が連結されていたのを見た記憶があるが、その車内のミニ郵便局を見学する時間がとられている。駅売店の店員さんは、「中島菜が名物で、店内も緑色の物が多いです。」というだけあって緑色系の特産品や菓子が多く並ぶ。駅の皆さんから手を振って見送りを受け発車。鶯餡をカステラで巻いた懐かしい甘さのロールケーキを食べていると、車窓にSSTRのバイクが映り並走する。七尾湾のぼら待ちやぐらが見え、手作り感満載のイルミネーションが施されたトンネルをくぐると終点穴水駅。昔は輪島や珠洲まで鉄路が繋がっていたが今はここまで。わずか一時間の素朴なもてなしだが、「能登は優しき土までも。」その意味が少し分かったような気がした。いつもの二輪車と少し違った視点で楽しむことができる、ローカル列車のショートトリップもたまには皆さんいかがでしょうか。


 
 
 

 

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