地域交流イベント「MOTOあらうんどNOTO」穴水町での開催レポート

5月21日(日)、22日(月)、24日(水)の3回にわたって行われました「風間深志と語ろう! MOTOあらうんどNOTO」。

3回目となる24日(水)は、根木ポケットパーク内 サングリエ の特設会場において、ミニ・シンポジウムを繰り広げました。

 

会場には、穴水町の吉村光輝町長もご臨席。

そして、河島信次さん(サングリエを経営者)、北川博幸さん(地元水産業)、さらには、STR2023ゲストで自転車冒険家のシール・エミコさんも話の輪に加わり、会場に集まったSSTRライダーとも交流しながら、SSTRの成り立ちや穴水町の魅力やについて語り合いました。

今回の進行役は金沢星稜大学の池田幸應 名誉教授。

先生は穴水町のまちづくりに長年携わってこられている方です。

左から、池田幸應先生、河島信次さん、シール・エミコさん、風間深志、吉村光輝町長、北川博幸さん

今回は当日の録音を基に、ある程度内容を整理した形でお伝えいたします。


穴水町の魅力とは?

池田先生: 今回お集りの皆さんの中には穴水出身の方もいらっしゃいますが、そうでない方もたくさんいらっしゃいます。

そこで吉村町長、穴水の魅力を一言、といっても難しいですが、一言お願いします。

 

吉村町長: はい、もちろん一言では言えないんですけど、この景色、この風、この雰囲気こそが穴水町の魅力だと思っています。

こういった環境の中で、美味しいものや人との出会いというのは、今回のイベントの魅力であると思いますし、こうしたゆったりとした時間の流れ方というのも、穴水町の魅力だと感じています。

池田先生: 能登半島には内浦・外浦というのがありますが、こちらは内浦に位置するところです。

今日は会場でふるまい鍋をしていますが、具にもなっているモズクは歯ごたえがあって、それでいて優しい味わい。
同じように、芯が強くて優しい人が多いのが内浦の土地柄です。

そんな雰囲気の穴水には「まいもん祭り」というのがあり、牡蠣やワインなどの祭りも毎年賑わうなど、食文化の豊かな場所ですね。

さて、風間さんは昨年も私と一緒にあなみずでイベントにご参加いただきましたが、風間さんは穴水町に、どういった感想をお持ちでしょうか?

風  間: はい、この町には明るさを感じますね。沿岸の集落、その中で女性が元気な印象で、平和な雰囲気を感じます。

 


SSTRはどのように発想されたのか?

池田先生: ありがとうございます。風間さんはこれまでいろいろな冒険をやってこられた中で、どうしてバイクで冒険の道へ?またどんな経緯でSSTRを思いついたのでしょう?

風  間: 僕はオートバイ大好き少年でした。 学ぶことも、就職もバイク一筋で全てやってきました。なんでこんなにバイクが好きなのかと言えば「バイク=自然」ということ、つまりバイクで自然の魅力を探求していくこと。世界の自然に浸ってみたい、と思って時には挑戦することにもなるわけです。

人知ままならない自然の中で、バイクだからこそ感じ取れたのは、自分という生身の人間の弱さ強さ、夢の凄さ、そして情熱の素晴らしさ。
こういったものを人間に生きる意味として多くの人々に伝えることをすれば、世の中にバイクというものを正しく表現できると思ったわけです。

そうした中で僕の座右の銘ではないですが、「日常がすべてであり一番大切なもの」。夢は日常から育まれ、夢のゴールもまた日常にあるもの。

自分なりにそういったことを自然の中から学び取ってきた気がします。

その日常を展開する「社会」というのはとっても大切なものです。

僕の場合で言えば、そこにバイクにかける情熱を注いでいるからこういう話になるわけです…。で、元の話って何でしたっけ?

そうそう、SSTRね。(笑)

僕は本当にバイク好きですが、ある時テレビに出るほど釣りに傾倒した時期がありました。

でもやっぱりと思って2輪の業界に振り返って俯瞰する。

悲しいかなそこで見たのは、世の中が二輪に対して冷めてる状態なんですよ。流行ってないんですよ。これは悔しいなと。

そこで思ったのがSSTRです。

当時は、速く、うまく乗ること。これが持てはやされていたけれど、『そういう乗り方は違うんじゃないか?』って思ったんですよ。

やっぱり老若男女誰しもが楽しめるものでなくてはならない。だから、旅を通じて冒険心を味わうことを提唱する。

参加した人がそこへ行ってきたことを誇りに思うような、それもバイクの旅の集大成として最大のものをやりたいなと。

それがSSTRになったわけです。

具体的に『それを千里浜で』、と考えたきっかけは、モンベルという会社が5年間千里浜で行ったカヌーイベントに参加したこと。

地球の運行、自然そのもの、人知の介入を許さない気然たる自然の営みといったものに触れることこそ、バイクの魅力だと考えています。

その中で、西の海に沈んでいく夕陽、そしてとても広い砂浜は人を魅了するに値するものだと考えました。

日が沈む、そんなことは日常生活の中で気にも留めないことだけれど、その瞬間の感動に打ち震えてほしい。

そして一日が終わることを示す夕陽を見ながら、「一日」という単位を生きた感動を、バイクの車上の人間として噛みしめてほしい。

その感動こそがバイクなんだと、多くの人々に実感してもらおうと思い、「Sunset・Sunrize・Touring・Rally」という名前を付けました。

127人から始まって3年目には1,000人に、その後も倍に倍にと増えていったわけですが、これはやはり能登の皆さんの歓迎があってこそなんです。

芯が強く優しい方々の文化に支えられた。

歓迎は千里浜沿岸の、宝達志水町・羽咋市という2つの町から始まりましたが、ライダー達が能登全体の魅力に取りつかれていき、歓迎の輪が今後もさらに大きく広がっていったらいいなと思っているんです。

11年目の今日も、このように「穴水町とSSTRとの関係」を考える場がここに設けられたということは、とてもうれしいことなので感謝しています。ありがとうございます。


旅の何を楽しむか?

池田先生: シール・エミコさんは80年代にオートバイでオーストラリアを旅されていた方ですが、当時女性でライダーというのは珍しい存在ではなかったでしょうか。

シールさんはどういったことからバイクに乗られるようになったんですか?

エミコさん: はい、私の場合は地球を感じてバイクに乗るようになりました。まず行きたかったところが、オーストラリアの中心、地球のヘソといわれているエアーズロック。

あれを自分の目で見てみたかったので、日本を飛び出しました。

 

池田先生:「ココに行きたいからそこへ行く」。これは簡単なようでいて難しいです。

でも、そう思わないと行くことはできないものですよね。

河島さんは60年もバイクに乗られていて、これまで全国いろいろなところにバイクで行かれたそうですが、行ったことがないところってあるんですか?

河島さん: はい、僕は日本一周を毎年やってきて、そんな年が何十年も続きました。

やっぱりバイクは、旅行をするにはいい道具だと思います。

団体で旅行するのはあまり得意ではないので、一人で気ままに旅できるバイクとは相性がいいんです。

そんな趣味がこうじて、バイク屋さんも10年ほどやりました。でも、遊びの道具は儲かりません。(笑)

バイクの話からは離れますが、私は20歳の時からハンターしています。イノシシは最高の獲物です。能登の地形は野生動物にとって素晴らしい環境なんですね。8年前からこの辺りにイノシシが増えて、6,500頭/年獲れるようになりました。

バイク乗りもそれくらい増えるといいですね。(笑)

話しを戻しますが、私はずっとバイクに乗っていて、今月だけでも4,500kmは走りましたね。

明日からもまた広島に行くんです。もう2,500㎞走ることになりますかね。高速は嫌いなので、ほとんどが下道。いろいろな風景に出逢えるのが楽しみです。

 

池田先生:四季折々に変化する穴水の自然。ジビエは山のものと呼ぶべきか、海のもの呼ぶべきかわかりませんが、駆除された獣たちをどう活用するのかこれは大事な問題です。

河島さんは本当に元気に走られてますよね、富山から移住されたそうですが、やはり穴水には落ちつける自然の風景というものがあるからだったのでしょう。

私も25年前から穴水の自然に関することなどに関わっていますが、当時からすると、明らかにライダーが増えたなという印象を受けます。

そのあたりについて、北川さんはどのように見ておられますか?

 

北川さん: そうですね、ライダーさん自体に特段の興味を持って見てきたわけではないですが、最近はグループで走られている方々を多く見かけます。

穴水は海・山が近くて、山が低いんですね。ライダーの目線で見ると閉塞感がなく「走りやすい」ということになるのかもしれません。

 

池田先生: 私は3年前に100人のライダーに「なぜSSTRに参加するのか」というアンケートをとりました。

この中では、「風間さんに会いたい」という意見も多かったのですが、「千里浜を走りたいから」「夕陽をみたいから」という回答も多い中、「能登で知り合った方々に会いたい」「穴水にもう一度行ってみたい」という方も多くなってきていて、キーワードが「道」ということから「人」に代わってきていることがわかったんですね。

 


ライダーにとってのSSTRとは?

恐らくライダーの中でも、ただただ走って誰とも会わずに帰ってくる、という人もいるかもしれませんが、それではさみしいですよね。

通りすがりではなく、人と出会い知り合って、もう一度会いたいという体験が大切です。

そういったことを目的に穴水にやってくる人たちが増えてくれるといいと思います。

そこで、ご来場中のライダーの方々にもご参加いただき、SSTRに参加した感想などをお話いただきましょう。

以前、池田先生と一緒に災害被災地支援をされたことがあるという、にっぽん応援ツーリングの参加ライダーの方
 

私はにっぽん応援ツーリングの方の参加者ですが、今年のSSTRは出ていません。私は小松市に住んでいまして、先ごろの豪雨災害で助けていただいたので、困った方のお役に立って恩返しができれば、ということでにっぽん応援ツーリングに参加しました。これからもどんどん参加していきたいと思います。

穴水を走っていて、たまたま立ち寄ったというSSTR参加ライダーの方
御前崎からSSTRに初めて参加しました。

若いころからバイクに乗っていましたが、いろいろな事情でやむを得ず、一時期バイクから離れていました。『どうしてももう一度』と、定年を機にリターンライダーになったんです。

走っている間のライダー同士触れ合えることが本当にうれしくて、これからもマイペースに行きたいところを走っていきたいと思います。

千里浜にあこがれていたので、今回能登を走れて本当に良かったと思っています。

現在進行中のにっぽん一周にSSTRとにっぽん応援ツーリングを組み入れて参加しているライダーの方

SSTRには去年参加させてもらいました。

風間さん主催のイベントに参加しながら、日本を元気づけていきたいと思います。

僕は福島県出身で、中学生の時にあの地震を体験しました。

バイクの奉仕活動があるということで、にっぽん応援ツーリングにも参加しています。今年は、今まさににっぽん一周中です。

故郷、穴水町にSSTRライダーを招く働きかけをしてくれている伊藤幸都美さん

私はこれまでSSTRには8回参加しています。穴水出身なので、帰省を兼ねて参加しているのですが、SSTRが親孝行にもなっています。

能登に来てくださる皆さんを昨年はバイク柄の着物で、今年はティラノザウルスになってお迎えしています。

皆さんと一緒に記念撮影をしたり、一つでも喜んでもらえたら嬉しいです。

 

毎日千里浜ゴールで参加者を歓迎し、SSTRを応援し続けている美多 隆一郎 

私は金沢在住でそれまでは千里浜に来てくださる皆さんのことを「スゴイな」、「かっこいいな」と思って眺めているばかりでした。

やがて自分も参加するようになり、2019年からこれまで5回参加しています。

やっぱり、ゴールで歓迎を受けるというのはうれしいものですね。

なので、私も皆さんを歓迎してみようと思いました。やってみると、皆さんからのリアクションがもらえるのが本当に嬉しくて楽しいですね。

1人でも多くの人に喜んでもらえたらなぁという思いで、毎日千里浜に来ています。

 


SSTRと穴水町の今後に向けて

池田先生: 穴水町は毎年、非常に多くの方々を迎えています。これによって地域の皆さんも、自分たちの地域の魅力を再認識したりすることができ、いろいろな出会いから町に元気をもらえているのだと思います。

今年のSSTRは会期中真っ只中ではありますが、最後に町長から穴水町がまた来年にもライダーを迎え入れていくにあたっての抱負をお聞かせいただき、風間さんからも、来年に向けての抱負をいただいて終わりにしたいと思います。

吉村町長: 先ほどの風間さんのお話で日常が大事というお話もありました。こうしてイベントで人を集めることも大事で、今後もできるだろうと思いますが、やはり他の地域から見えた方々に、日常的な能登の人々を見ていただきながら、触れ合う機会をこれからも作っていくことが大切だと思います。そのために、能登の皆さんの日常を守っていける政策を考え続けていかなければいけないと考えています。

池田先生: 風間さん最後にお願いします。

 

風  間: はい、ちょっとこれは刺激する意味で言います。

今年は羽咋市から、副市長・教育長・校長先生・教頭先生・教育委員会職員の5名の方々がSSTRを走られたんですね。これは非常にありがたく、嬉しいことでした。

また志賀町からも4人の職員の方々がお出になったそうなんです。

そして珠洲市では、僕より年上の人や同い年くらいの人たちが、「Ohtaniモーターサイクルクラブ」を作っていて、「もう取らないと思っていた次のバイクの車検を、やっぱりとるぞ!」と盛り上がっていました。

僕が能登の町にオートバイのイベントを持ってくると言った10年前は、疎ましがられることも少なからずだったんです。

でも、今ではこうして町の中心をなす人たちが、僕たちが持ってくるライダーの気質や喜びを『自分たちも感じてみようか』と思ってバイクに乗ってくれて、そのことによって自ら町に明かりを灯そうっていう能動的な気持ちを持ってくれたことが、11年目のSSTRで最高に嬉しいことだと思っています。

なので来年は、穴水の方々も、是非まちづくりのためにバイクに乗ってみていただきたいと思います。

池田先生: 観光交流課の中瀬課長も、今日はトライクに乗っておいでですが、是非より多くの方々が穴水に立ち寄って、人と出会って関わって体験できるような街づくりをお願いして今日を終えたいと思います。

皆さんありがとうございました。

 


 

会場周辺の様子など

 

あなみずセカンドステージ・風間深志と語ろう! MOTOあらうんどNOTO

◆日時:5/24(水)(13:00~14:00 )
◆会場:穴水町/根木ポケットパーク内 サングリエ 特設会場
◆内容:風間深志トークショー&地元ライダー・住民との交流会
◆主催:穴水町
◆企画:金沢星稜大学  あなみずスポーツツーリズム推進事業検討委員会委員長  池田幸應 名誉教授 


その他の町の「MOTOあらうんどNOTO」

 
5月21日(日)志賀町・道の駅のと海街道 22日(月)珠洲市・道の駅すず塩田村